私好みの新刊 202004

『宇宙の終わりってどうなるの?』 (子供の科学ミライサイエンス)

佐藤勝彦/著 誠文堂新光社

 宇宙の終わりって想像したことある?って、はじめのページにかかれているが、

宇宙の終わりなんてとてつもない想像を絶する世界いだ。この本はそのような

宇宙の終末に挑戦している。まず初めに、地球の成り立ちから始まって、銀河

系や宇宙の終わりはどうなるのかなど、最新の宇宙研究の成果がお話になって

いる。キャラクターがしゃべったりして興味深く読み進められる。

 Part1は「地球の現在・過去・未来」である。「もしも、地球が磁石でなかっ

たら?」とか「大きな衛星・月」とか「15000万年後に日本が消滅?」などと

恐ろしい話が続く。地球もこのままずっと安定して続くわけでもないらしい。

Part2では「太陽系の現在・過去・未来」である。ここでは「木星の大移動が

太陽系の姿を変えた?」とか「10億年後に地球の海が蒸発する?」とか「50

年後から太陽が膨張して巨大な赤い星になる?」などのさらに恐ろしい話題が

続く。

Part3からは、今まであまり知られていなかった銀河系の話が続く。ここでは
「天の川銀河の現在・過去・未来」であるが、まずは銀河そのものの大きさ
に改めてびっくりする。「太陽から10光年の距離には、10個ほどの恒星が
あります。これは、太平洋にスイカが2個か3個浮かんでいる程度のすきすき
具合です」とある。白くて星が詰まっているように見える天の川銀河もすきす
きの世界だ。それでも、われら太陽のある天の川銀河の中心部には、星が密集
していて丸いふくらみを作っているとか。そのふくらみに超巨大ブラックホー
ルが潜んでいるという。「40億年後に天の川銀河はアンドロメダ銀河と衝突す
?」とかの話もある。現在、アンドロメダ銀河がもうれつな速さで天の川銀河
に近づいているらしい。Part4は「宇宙の現在・過去・未来」。ここではさらに
驚くことばかり。今も銀河集団そのものは膨らんでいるという。宇宙が永遠に
膨張しているという説のほかに、逆に収縮に向かうこともあるという説、バラ
バラになるという説もある。そんな未来に、地球はどうなるのだろうか。宇宙
の未来がどのようになっていくのか、はてしない宇宙の迷走物語を堪能できる。
複雑な話が続くがさし絵が添えられているので、銀河のイメージもそれなりに
描くことができる。          201909   1,400

 

『先生、ウンチとれました』  牛田一成/著   さ・え・ら書房

 子どもに喜ばれそうな本としてよく出ている「ウンチものか」と読み始めてみ

ると、意外や意外、動物のウンチから取り出す微生物を求めて研究されている研

究者の活動報告である。それがまた壮烈な記録である。

ゴリラに怒られ、ゾウに追いかけられての糞の採集、熱帯雨林地帯やサハラ砂漠、

チベットの高原やモンゴルの砂漠地帯へも行くという。日本では北アルプスや南

アルプス、屋久島まで、世界中の難所に出向いてのウンチ採集物語である。それも

、できるだけ出たてのウンチを求めなければならない。壮絶なウンチ採集物語で

ある。そんなにしてまで、できたてのウンチを求める目的は何なのか、著者は言う。

動物のウンチから取り出した腸内細菌の分析から、その動物に棲む細菌の遺伝子

や性質もわかるらしい。それらの研究は、動物の自然保護にも役立ち、希少動物

や絶滅危惧種を守っていく一つの方法でもあるとのこと。「野生動物のウンチ博士」

と言われている著者の〈ほやほやウンチ採集物語〉である。

 なにはともあれ、本の大半は、各動物のウンチ採集物語で埋められている。人

類の祖先にもある乳酸菌を調べるためにも、まずは人に一番近い動物チンパンジー

のウンチを探すことに。チンパンジーの森へ出かける話から始まる。やっと見つけ

たチンパンジーの後をつけて、出来立てのウンチを求めて歩く。熱帯の森は、樹木

が密集していてチンパンジーを見つけるにも一苦労。次は、ゴリラとピグミーの森へ

、アフリカの奥地に進む。ゴリラのウンチを求める旅もまた困難続き。においをか

ぎながら足跡をたどる。やがて、ウガンダのマウンテンゴリラへ。朝早くからレン

ジャーたちと山に登ってはゴリラのウンチを求めて歩く。次は、野生ゾウのウンチ

を求めて歩きまわる話。川を渡りやぶを歩く。ゾウはとても危ないそうだ。耳もいい

し地面を伝わる音波を足の裏で感じ取るという。森の中でいきなり出くわす時が、

一番危ないという。「あっ! ゾウがこちらに向かってくる」「逃げろ!」と危険な

場合もあった。危険を顧みず、かかんに真理探究にいどむ研究者の研究物語である。 

                           20199月 1,400

              新刊案内4